「つきみいくら」開発秘話

「つきみいくら」開発秘話

2020年10月。秋の訪れを感じさせる日、「つきみいくら」生産者であるSmoltの代表、上野賢さんが製品完成に合わせて、宮崎から東京にいらっしゃいました。つきみいくら開発にずっと携わっていただいたスターシェフ、福躍さんへの完成報告も兼ねた今回の旅は、想いを込めてつきみいくらを作り上げた上野さんにとって節目となるタイミングです。製品化に至るまでの経緯と想いについてお話しいただきました。

上野 賢


―まずは、つきみいくらの完成、おめでとうございます。

上野:ありがとうございます。お待たせいたしました。ようやくの完成です。

―「つきみいくら」は、いわゆる市販の鮭の赤いいくらとは一線を画する製品だと思います。製品開発に尽力された1年間だったと思いますが、どのようにプロジェクトが始まりましたか?

上野:Smoltは2019年に設立した若い企業です。宮崎大学にて桜鱒の専門的な研究を行ったあと、研究成果を生かした養殖事業を本格始動するために立ち上げました。製品化の経験はあったものの、もっと味・ネーミング・パッケージ等すべてをこだわり抜いたものを作りたいと思っていました。そんな中、さかなファームさん(CRAFTFISH編集部)とのご縁があり、最高の製品を作ろうとプロジェクトがスタートしました。

まずは現状を把握しようということで、西麻布で和食のレストランを営まれている腕の確かなシェフがいらっしゃると紹介していただいて、桜鱒の身と卵をお送りし、料理してもらうところからが始まりでした。これが福躍さんとの出会いになります。2020年1月ころでしょうか。

福躍さんと上野さん

―福躍さんの桜鱒料理を召し上がって、いかがでしたか?

上野:一流の方に実際に料理してもらうことによって、自分でも認識できていなかった、桜鱒の強み・弱みを明らかになりました。その際に得られたアドバイスを元に、エサを調整して品質を高めた桜鱒が、今回の製品にも使われています。

この時に試作した中で、特に印象的だったのが福躍さんお得意の和風出汁が効いたいくらでした。

―それが、オリジナルのつきみいくらだったわけですね。

上野:そういうことになります。地元のレシピで従来の味付けをしたいくらと比較しても断然美味しく、かつこれまでに食べたことがない印象で、これはいけると直感的に感じました。ちょうどそのタイミングで、Industry-Up Day 2020というセミナーに登壇することになっていたので、そこで来場者の方々に福躍さんに調理頂いたいくらを振る舞いました。大盛況だったので手応えを感じましたね。

―そこから、製品化に向けてレシピを突き詰めていったという流れになると。

上野:はい、福躍さんと二人三脚でのレシピ開発がスタートしました。
福躍さんは、一言でいうと探求者というイメージです。ひとつのテーマに関して突き詰めてくださって、自分なりの答えを出す方でした。

月に一度か二度、素材をお送りして、改善点を提示してもらうという形で開発を進めました。基本的には、福躍さんの自由な発想で作っていただいて、それが食品加工場で再現できるか、十分な保存が出来るかどうかを検討した上で、その後食べてもらってまた改善案をいただくという形でした。

福躍 匡史

―特に印象的だったエピソードはありますか?

上野:福躍さんはおでん屋さんということもあり、出汁に絶対的な自信をお持ちです。
味を決めるときも、持ち味である出汁へのこだわりを優先し、突き詰めていきました。
私からお願いしたのは、桜鱒のいくらの美しい黄色を生かすため「クリアな出汁で理想的な味を実現したい」ということと、「インパクトがあるが食べ飽きない味であってほしい」というものでした。

特にインパクトがあって食べ飽きないと言う矛盾する部分を、福躍さんには見事に職人の技で応えて頂きました。

その後も最終製品にする過程で、加工・量産の観点での問題をひとつひとつ解決し、無事、福躍さんのレシピを最大限に反映したものにすることができました。出汁の製法や漬け時間などすべて独自のものとなります。

つきみいくら
―味を突き詰める過程を一緒に伴走していましたので、私も感慨深いです。ネーミング・パッケージなど、ブランディングに感じてはいかがでしょうか?

上野:ネーミングは、ユニークでなおかつ親しみやすいものでなくてはいけません。いくらをなにかにたとえて、和のイメージを重ねて…というところから「つきみいくら」という名前にたどり着きました。物静かな趣きを感じさせる響きは、お出汁の香る福躍さんのレシピにも合っています。

パッケージに関しては、従来の水産製品のイメージを覆すようなもので、「つきみいくら」という言葉が持つ静かに佇む印象を込めたい、というオーダーでデザインしてもらいました。紺の背景に金色の月と星の浮かぶデザインを見たとき、これだと思いました。

つきみいくらパッケージ

―開発のスタートから、味・名前・パッケージと、製品化に至るまで本当にお疲れさまでした。これからつきみいくらが順次配送されていくわけですが、ご購入いただいた、あるいは興味を持ってくださる皆様に対してのメッセージはありますか?

上野:今回はじめて僕の挑戦を知り、つきみいくらを購入していただいた方々に対して、感謝とともに、全力で商品で応えていきたいと思っています。これからも、もっともっと美味しくしていこうと思っていますので、引き続き一緒に頑張っていきたい、そういう関係を築いていければという想いです。

また、Smoltには2019年に実施したクラウドファンディングの頃から継続的に応援してくださっている方々がいらっしゃいます。僕の想いに賛同して応援してくださっていて、本当にありがたいという気持ちです。その人達が応援してくれるから、僕も頑張れますし、そこに責任感というか使命感が生まれて、前に進む力になったという部分があります。

つきみいくらに続いて、桜鱒の身についても商品開発も進めています。Smoltはこれからも新しい水産業の世界を切り拓いていきますので、応援よろしくおねがいします!

―私たち編集部も、Smoltと上野さんの挑戦を応援し、追いかけていきます。この度は取材をお受けいただき、ありがとうございました。

上野:ありがとうございました。これからもよろしくおねがいします!

上野 賢