海の未来を守るために想いを込めて育てられた食材との出逢いや感動をお客様へお届けしたい
「カフェ カリフォルニア」田淵 義和シェフ
「日本各地でつくられた素材の美味しさを、そのままお客様へお届けする」をコンセプトに、クラシックフレンチに国産食材を取り入れ、ホテルレストランならではの上質な料理を提供するシェラトン都ホテル東京の「カフェ カリフォルニア」。同ホテルでは2022年より本格的にサステナブルな取り組みに力を入れており、その皮切りとして「カフェ カリフォルニア」では「海幸ゆきのや合同会社」が静岡県で陸上養殖する国産バナメイエビ「幸えび」をグランドメニューに採用しています。CRAFT FISH食材の魅力について、田淵 義和(たぶち よしかず)シェフにお話をうかがいました。
生産者の想いが詰まったサステナブルな国産食材を探して出逢ったのが「CRAFT FISH」
――まずは、CRAFT FISHの食材に興味を持たれたきっかけを教えてください。
2022年の夏頃だったでしょうか。シェラトン都ホテル東京「カフェ カリフォルニア」では秋に抜本的なメニューのリニューアルを控えていて、新たな食材を探していました。それまでは外国産の食材も使っていたのですが、昨今の環境破壊・資源不足の問題や社会事情などを鑑み、より安心・安全で持続可能な国産の食材に切り替えようと、大きく舵を切ることにしたのです。
掲げたコンセプトは「日本各地でつくられた素材の美味しさをそのままお客様へお届けする」。日本には素晴らしい食材がたくさんあります。国内の生産者の方々が丹精込めて育てた食材をお客様へお届けしたいという気持ちと共に、特にここ数年は、外国産の食材の入荷停止や価格の高騰が重なり、供給の面でも安定性が脅かされることが少なくなかったため、可能な限り国産食材を使うことが時代の流れだと考えました。
そんな時に出逢ったのがCRAFT FISHです。減りゆく水産資源を守りながら、環境負荷が少ない方法でつくられる国産食材——。志を共にできる! と感じましたね。
――CRAFT FISHを「国産食材」として捉えられているのですね。
はい、私たちがいちばん届けたいのは、“国内の”生産者さんの想いが詰まった美味しい食材。養殖か天然かという視点で選んでいるわけではありません。店では他にも、種類を指定することなくその日獲れた鮮魚を大分県から直送してもらったり、秋田ポークこまち豚は、ウデ、モモ、肩ロース肉など、かたまりで使用できない部位をジャンボンブランやパテ・ド・カンパーニュに加工したりと、素材をできるだけ無駄なく使い切るよう努めています。
―― CRAFT FISHで最初に使いたいと思われたのはどの食材でしたか? またその理由を聞かせてください。
リニューアル当初からグランドメニューで使用している「幸えび」です。日本で流通しているバナメイエビがほぼ輸入品という中で、日本国内で陸上養殖されているというそのめずらしさに、まず興味を持ちました。
「カフェ カリフォルニア」はシェラトン都ホテル東京内のレストランです。私たちは、せっかくホテルレストランに来ていただいたからには、お客様には日常では味わえないものを召し上がっていただきたいと日頃から考えています。クラシックフレンチというスタイルはもちろん、食材もそのひとつ。そういった面でも、バナメイエビ、キャビア、サクラマスにヤイトハタなど、CRAFT FISHでならばきっと、お客様にも新しい国産食材との出逢いや感動をお届けできるのではと思いました。
幸えびのベストな美味しさを伝えきるためにこだわったのは繊細な火入れ
―― 現在提供されている、幸えびを使ったグランドメニュー「静岡県産幸えびと愛媛県産みかん鯛と瀬戸内レモンのマリネ」と「静岡県産幸えびと北海道産帆立貝のブイヤベース」についておうかがいします。なぜ、これらの料理に仕立てようと思われたのでしょうか?
幸えびを食べた時、クリアな甘みがとても印象的でした。同じ養殖バナメイエビでも外国産のものは臭みや雑味があることも少なくありません。その点、幸えびは身はもちろんのこと、ミソまでもまっすぐな旨みだけが感じられた。だからこそ「カフェ カリフォルニア」のコンセプト通り「国産食材の美味しさをそのまま」お届けしたいと考えたのです。
幸えびは生でも食べられます。バナメイエビを生で食べる機会はめったにありませんから、ぜひそれも体験していただきたく悩ましかったのですが、私が最初に感じた甘みを味わっていただくには、ほんの少しだけ火を通すのがベストだという結論に至りました。
「静岡県産幸えびと愛媛県産みかん鯛と瀬戸内レモンのマリネ」は、頭の部分だけをクールブイヨン(野菜の出汁)でしっかり火を通し、その旨みが出たスープで身の部分をサッとボイルしています。その後、塩とオリーブオイルでマリネすることでさらに甘みを引き出し、仕上げに全体を引き締めるレモンドレッシングを。
「静岡県産幸えびと愛媛県産みかん鯛と瀬戸内レモンのマリネ」
「静岡県産幸えびと北海道産帆立貝のブイヤベース」も、幸えびに完全に火が通り切るかどうかのギリギリの火入れに仕上げています。香味野菜やトマトなどと合わせてマリネしておいた他の食材をムール貝の出汁で煮込み、幸えびだけは最後の最後に加えて軽く火を通す。ブイヤベースというと、豪快な魚介鍋を想像するかもしれませんが、ホテルならではの特別なかたちで、ひとつひとつの素材を美味しく召し上がっていただくための一品です。
「静岡県産幸えびと北海道産帆立貝のブイヤベース」には瀬戸内産ムール貝と本日の鮮魚も。ルイユ添え
――苦労した点はありますか?
どのようにすれば、より魅力的な料理になるかを非常に考えさせられましたね。というのも、それまで使用していたのはオマール海老や手長海老、鮮やかなピンク色のサーモンなど、外国産の派手な食材。見た目のインパクトもありますし味も強い。それに比べてCRAFT FISHの食材は、幸えびやサクラマスのようにどうしても上品で滋味深いものが多くなります。でも、それがその食材本来の姿なんです。だからこそ、少しでもお客様にとって印象的な出逢いになるよう、盛り付けや彩り、調理を工夫しています。
おかげさまでお客様からも大変好評で、「国産バナメイエビ、それも有頭なんてめずらしいですね」「とても美味しかった」というお声をたくさんいただきます。多くの方がキレイに頭を開いてミソまで召し上がってくださっているのを見ると、私たちの想いも食材の美味しさも伝わってるのかなと嬉しく思っています。
――最後に、今後取り組みたいことを教えてください。
今はまだ、シェラトン都ホテル東京の中でも「カフェ カルフォルニア」だけが先行して、こうした取り組みを行っています。今後は、お客様から良いお声をもっといただけるよう料理の幅を広げ、ホテル全体へ、そしてグループ全体へと広めていきたいですね。そうすれば自ずとより多くのお客様に国産食材を味わっていただける機会が増えます。日本の食材を、日本で、日本の方にも海外の方にも美味しく召し上がっていただく。我々がそのお役に立てれば嬉しいです。
カフェ カリフォルニア
住所 | 東京都港区白金台1-1-50 1F |
TEL | 0120-95-6661 |
アクセス | 東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線 白金台駅より徒歩約4分 |
営業時間 |
朝食 7:00~10:30 ランチ ディナー 18:00~22:00 |
定休日 | 月曜 ※祝日を除く |
支払い | クレジットカード可(JCB、AMEX、VISA、MASTER、Diners) |
HP | カフェ カリフォルニア |
写真・広瀬 美佳 文・山本 愛理