「身質、旨みの強さ、柔らかい殻。どれをとっても料理人に『使いたい』と思わせる食材です」
廣澤 将也
関西電力の子会社「海幸ゆきのや合同会社」が生産するバナメイエビのブランド「幸えび」。バナメイエビは国内ではほぼ輸入品という中、国産で陸上養殖される珍しいエビです。最先端の設備で、薬品や抗生物質などを一切使わない安全な環境で育てられるなど、かつてないほどのクオリティに仕上がっています。この「幸えび」の美味しさをご家庭にも届けたいと、「幸えびのエビチリ」「幸えびのエビマヨ」を開発した進化し続ける関西中華のトップシェフ、廣澤 将也(ひろさわ まさや)シェフに商品開発秘話を伺いました。
廣澤シェフが「幸えび」で挑む、2大エビ料理
――「幸えびとトマトの卵炒め」に続き、第2弾は中華を代表するエビ料理、チリソース煮とマヨネーズソース和えですね。楽しみにされていた方も多いと思います。
ありがとうございます。前回は、まずは幸えびそのもののクリアで深みがある美味しさをダイレクトに味わっていただきたくてシンプルな塩味の炒めものに仕上げたのですが、ぜひ違った味わい方でも楽しんでいただければと思い、王道の2品にチャレンジしました!
――どちらも多くの方に馴染みある中華料理ですが、ズバリ、「幸えび」と廣澤シェフならではの美味しさは、どのような点に表れていますか?
僕は常々、その時季に一番美味しい食材を一番美味しい料理にして提供すること、つまり「素材を活かす料理」を大切にしています。
中華料理と聞くと、油や香辛料・香味野菜を多用した強い味付けのイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、素材自体に確かなポテンシャルがあれば、余計な調味や調理でごまかさなくても上品で軽やかで深みのある美味しい中華料理を作ることができます。それに、いかに素材の持ち味を引き出すことができるかは、料理人の腕の見せどころの一つだと思うんです。
幸えびはまさに、確かな“素材力”を持った、料理人に「使いたい」と思わせる食材です。初めて食べた時、ほどよく引き締まった身、噛めば噛むほど溢れ出る雑味のないキレイな旨みと味噌のコク、そしてそれらが長く続く“余韻”がとても印象的でした。この幸えびの美味しさを最大限に味わえるエビチリ、エビマヨを作りたい――。今回の商品作りも、その一心で挑みました。
多くの方に親しみのある2品なので手に取っていただきやすいと思いますし、普段召し上がっているものとの違いも感じていただけるのではと思っています。
――具体的にこだわった点を教えてください。
実は、どちらの料理も、揚げた幸えびにソースを絡めるという工程で作るのですが、まったく違う味わいを楽しんでいただけるよう工夫しました。
まずチリソース煮は、幸えびを頭と殻をつけたままの状態で素揚げにします。そうすることで、ほどよく水分が飛んで身の旨みが凝縮するだけでなく、ソースと煮込んだ際に殻の香ばしさや濃厚な味噌のコクまでがすべて溶け出し、実にエビの風味が豊かなソースに仕上がります。一般的なエビチリでよく使うニンニクや生姜なども一切使っていないので、身もソースも、幸えびそのものの奥深い旨みと香りを存分に味わっていただけるはずです。
一方でマヨネーズソースの方は、クリーミーなソースに馴染むよう殻や頭はすべて取り除いて、むき身にして使いました。しっかり衣をまとわせて水分を閉じ込めるように軽く揚げ、あとは冷たいソースにサッと和えるだけ。幸えび自体のサイズも、チリソース煮よりも二回りほど大きなものを使っているので、よりしっとりとした食感と、濃厚なソースにも負けない豊かな甘みを感じていただけると思います。
家庭ならではの自由なアレンジで、楽しみ方は無限大に
――ご家庭用商品にする上で、難しかった点はありますか?
前回、卵炒めを作った時も感じたことですが、やはり、いかに作りたてと同じ美味しさをお届けできるかが、一番の勝負どころでしたね。
たとえばエビチリの場合、素揚げした幸えびの殻の食感に悩まされました。今回のエビチリは、ソースと合わせた状態でお届けし、湯煎で温めていただくもの。最初の身の揚げ方が甘いと、袋詰めにした時に殻がソースの水分を多く吸ってしまって軽やかな食感は失われてしまいますし、かといって火を入れすぎると身も殻も硬くなり、口の中を傷つける可能性がある。でも、殻ごと使うことにこそ“幸えびで作るエビチリ”の最大の美味しさがあるので、殻を外すという選択肢はない……。なかなかに苦戦しました(笑)。
当初はもう少し大きいサイズの幸えびを使用していたのですが、身のサイズを小さくし、揚げる温度・時間を細かく調整して、やっと納得いく味にたどり着きました。
エビマヨでいえば、熱を加えると分離してしまうというマヨネーズの特性が大きな壁で……。和えるタイミング、ソースと身の温度差、使う調味料など、考え得る改善点を一つずつ試しては微調整を加え、また作って食べてみる。その繰り返しでしたね。
関西電力の皆さんにも、何度も何度も食べていただきましたよ(笑)。でもそのおかげで、自信を持ってお届けできるものが完成しました! レストランのクオリティを気軽に味わっていただけることはもちろん、自由にアレンジできることも、ご家庭用商品の醍醐味だと思いますので、ぜひいろいろな食べ方で楽しんでいただけると嬉しいです。
――最後に、廣澤シェフおすすめの食べ方を教えてください!
エビチリは、ソースにも幸えびの旨みや味噌がすべて溶け込んでいますので、ソースも余すことなく召し上がってください。バゲットや揚げた春巻きの皮をディップするのもおすすめですし、生の食パンに染み込ませても美味しいと思います。あと意外と合うのが、チーズトースト! 辛さがややマイルドになり深みが増します。ぜひお試しを。
エビマヨは、たっぷりの野菜に載せてサラダ仕立てにするのがおすすめかな。お好みの野菜のほかに、グレープフルーツやみかんなどの少し酸味のあるフルーツを加えていただくと、幸えびとフルーツの甘みの調和や、やさしい爽快感が感じられてまた違った味わいで楽しんでいただけると思います。
それから……、少々贅沢ではありますがぜひ試していただきたいのが、エビチリとエビマヨの盛り合わせ! それぞれのソースが混ざるとまた美味しいんですよ(笑)。紅白のえび料理はおめでたい席にももってこいなので、贈り物として人から人へ伝わることで、多くの方に幸えびの美味しさを知っていただければ嬉しいですね。
写真・伊藤 信 / 文・山本愛理