きめ細やかな身質に感激!良質な魚ほど、簡単調理でごちそうになる
日本一のマスの産地・静岡県。中でも「富士養鱒漁業協同組合」が手がける「紅富士(あかふじ)」は、富士山の湧水と最高レベルの品質管理の下で通常より長い期間をかけて大切に育てられた、プレミアムブランドのニジマスです。大きさ、身質、身色、脱血と活け〆の徹底など、厳しい基準をクリアしたものだけが「紅富士」を名乗ることができます。この「紅富士」の美味しい食べ方を、クラフトフィッシュのスターシェフの一人、日本料理家・藤田貴子(ふじた たかこ)先生に伺いました。
「日本料理はSimple is the best。だからこそ、魚料理は魚の質によってすべてが決まるといっても過言ではない」と語るほど、徹底して素材を選ぶ、日本料理家・藤田貴子先生。東京・南麻布で「日本料理教室 藤田」(2022年に軽井沢に移転オープン予定)を主宰する傍らで、NHK「きょうの料理」で講師を務めるなど長きにわたって日本料理携わり、さまざまな良質な素材に触れてきた藤田先生ですら、紅富士を目にした時にはその引き締まった身に驚いたといいます。
「料理人は、水分加減を見ただけで魚の質がわかります。身の締まり具合や水っぽさで味が決まるからです。紅富士の身質の良さは一目瞭然でした。とにかくきめ細やかで、ドリップもなし。細胞がキュッと詰まって余計な水分を含んでいない証しです。脂のりも適度ですし、まるでベストシーズンの天然モノのようでびっくりしました」
一般的に、魚は水分が多いほど傷みやすく、臭みも出やすくなります。さらにこれまでの養殖魚は、餌の匂いをダイレクトに感じるものも多く、それを取り除くために調理工程にさまざまな工夫が必要になり、魚離れの原因のひとつにもなっていました。しかし、富士山の湧水と安心・安全な餌で育てられた良質な身質を持つ紅富士は、そういった心配がありません。簡単な調理で美味しく仕上げることができることはもちろん、長時間傷むことなく、よい状態を保つことができます。
「魚料理は、魚の質がものをいいます。つまり、魚の質がよければけっして難しいものではありません。紅富士は1週間ほどは生食で美味しくいただけますし、味噌漬けやアラ汁などのシンプルな料理でも、とびきりのごちそうになります」
紅富士の真骨頂! 引き締まった身質を堪能する「紅富士のタルタル」
今回、藤田先生が教えてくれたのは「紅富士のタルタル」です。なんと調味は塩とオリーブオイルのみ! 実山椒のアクセントを加えて和風に仕立てます。「実は生魚と野菜を和える料理は、魚と野菜の両方から水分が出るために水っぽくなりやすいんです。味が決まらない、臭みが気になるなど、意外と悩みが多いもの。でも紅富士ならそんな心配は要りません。お料理初心者の方でも簡単に美味しく作れます」。
材料
紅富士 | 300g |
塩 | 少々 |
赤玉ねぎ | 80g |
青パプリカ | 1/4個(またはピーマン1個) |
実山椒 | おおさじ1 |
オリーブオイル | 適宜 |
うずらの卵黄 | 4個分 |
飾りハーブ | お好みで |
作り方
1. 紅富士の下処理をする(小骨を抜く、皮を引く)
紅富士には、サケやマスの仲間の魚に特有の小骨があるため、取り除きます。中央よりやや背中寄りの位置に身に食い込むように並んでいるので、指先でなぞって確かめながら骨抜きを使って1本ずつ抜きます。骨の端をつまんだら、頭の方に向かって引っ張るとスムーズに抜くことができます。
次に、皮を引きます。皮目を下にして紅富士をまな板に置き、身と皮の間に包丁の刃を入れます。この時、包丁がまな板にぺったりと付くようになるべく寝かせるのがコツ。角度をつけてしまうと、皮に身が残ってしまうので注意してください。包丁を動かすのではなく、皮を引っ張るイメージではがしていきます。
「取った皮は少し乾燥させてから、パリパリになるまで焼いて『皮せんべい』にすれば美味しく召し上がっていただけます。骨と一緒にアラ汁などにするのもおすすめです」(藤田先生)
2. 当て塩をして、冷蔵庫で寝かせる
紅富士を7ミリ〜1センチ程度の角切りにします。とろりとした食感に仕上げたい場合は小さめに、しっかりと素材感を楽しみたい場合は大きめに切ってください。角切りにした紅富士をバットに並べ、やや強めに当て塩をしたらラップをかけて冷蔵庫で1〜2時間ほど寝かせます。
「一般的に魚は塩をして寝かせると、臭みと一緒に余分な水分がたくさん出てくるのですが、この紅富士はほとんどドリップが出ません。これには私もとても驚きました。もともと余分な水分や臭みが含まれていない、良質な身の証しですね」と、藤田先生。しかし、今回はあえてこの一手間を加えることで、よりねっとりとした口当たりと濃厚な味わいに仕上げます。また下味も兼ねているので、塩はしっかりめに当てます。
3. 野菜と和える
1〜2時間ほど経った紅富士を冷蔵庫から取り出し、キッチンペーパーで表面をおさえて、水分を取ります。大きめのボウルに、みじん切りにした赤たまねぎと青パプリカ、実山椒、オリーブオイルを加えてよく混ぜます。最後に紅富士を加え、オリーブオイルを少々かけまわして、和えます。
4. セルクル型に入れて盛り付け、完成!
皿にセルクルを置き、隙間ができないようタルタルを詰めていきます。セルクルがない場合は、やや深さのある器に盛ってもOKです。最後に型を抜き、中央にうずらの卵黄を落とします。うずらの卵は、指先を使うとキレイに卵黄と卵白が分けられます。お好みでハーブを飾って完成!
うずらの卵を崩して、タルタルとしっかり和えながらお召し上がりください。お好みで、少量の醤油を垂らしても美味です。ねっとりとした口当たりと濃厚な旨みがありながらも、後味がさっぱりとしているのは紅富士ならでは。実山椒の華やかな香りや赤玉ねぎのシャキシャキとした食感がよいアクセントになり、紅富士の甘みを引き立てます。たっぷり作ってサラダに載せたりと、ぜひアレンジも楽しんでみてください。
写真・広瀬美佳 / 文・山本愛理
PROFILE
Takako Fujita
日本料理家
日本料理教室 藤田(※2022年早春に新規オープン予定)
HP :http://fu-ji-ta.com/