福躍 匡史

福躍 匡史
Masashi Fukuodori
「福躍」店主

 

4種の厳選素材を独自配合して仕立てる、至極の出汁おでん

利尻昆布、鯖節、鰹節、鰯節から引いた、こだわりの出汁で仕込むおでんが自慢の西麻布「福躍(ふくおどり)」。高級食材を使った料理を提供する店がひしめく西麻布の街だからこそ、親しみのある食材で作る素朴な「おでん」を、当たり前に美味しく、そして贅沢に召し上がっていただきたいと店主の福躍匡史(ふくおどり まさし)さんは話します。

福躍さんがおでん作りを始めたのは今から約20年前。当時はまだ、おでんといえば屋台や立呑店で楽しまれる大衆的なメニューであり、洗練されたおでん専門店は珍しい時代でした。そんな中、代官山で「俺のおでん 福躍」の料理長を務めることになった福躍さんが、日本料理としてのおでんを極めんとして行き着いたのが味の肝となる“出汁”だったといいます。

「それまでは大手飲食店の和食部門で料理長を務めていたのですが、おでんは作ったことがありませんでした。なので、おでん作りはほぼ独学です。築地市場で鯖節や鰯節を買い込んできては出汁を引いて、調合を変えたり削り節の厚みを変えたり、煮出す時間を変えたり……、とにかく試行錯誤の連続でした」

目指したのは、上品でありながらも確かな旨みと個性を感じさせる京風出汁。出汁を引く温度やそれぞれの食材を加えるタイミングにもこだわった、鯖、鰹、鰯の3種の削り節と利尻昆布で引く味わい深い出汁は、いつしか「究極の出汁」と賞されるように。2013年に独立し、西麻布に「福躍」をオープンしてからも、毎日、引きたての出汁でおでんを仕込んでいます。

「僕は、人を喜ばせることが好きなんです。人よりちょっと料理が得意だから、その手段が料理やおでんというだけ。特別に高級なものではないけれど、おでんという素朴な料理をきちんと美味しく仕立てることで、お客様の喜びに繋がっていれば嬉しいですね」

CHEF'S VOICE:
食材があって初めて料理人という仕事が成り立つ。安定供給に期待

これからやってくる未来は、“養殖魚だからこそ、安心安全で美味しい”という時代だと思います。日本の養殖産業のますますの発展が楽しみですね。確かにまだ魚種によっては、天然の方が美味しいとされるものもたくさんあります。でも、料理人の世界でも“天然の魚が絶対”という考えがなくなっていきていることは、明らかな事実といえるでしょう。

ましてや養殖には、「安心安全」と「安定供給」という大きな強みがあります。特に昨今は、鮭や秋刀魚など、漁獲量の大幅な減少から高騰が続く魚も少なくありません。かつては当たり前のように食卓に並んでいた魚が、高級魚と化しつつあるのです。もちろんまだ養殖技術が確立されていない魚もありますが、もし将来的にそれらの魚も安定して手に入れることができるようになれば、昔ながらの日本の味を守ることにも繋がります。

僕ら料理人は、素材である魚がなければ、どんなに頑張っても美味しい料理を作ることができません。安心安全で美味しい魚が安定して手に入る時代は、料理人にとっても大きな希望です。CRAFT FISHでは商品開発を通して養殖魚の魅力を多くの方にお伝えすることで、そんな未来に貢献できればと思っています!

PROFILE

福躍匡史
Masashi Fukuodori
「福躍」店主

 

高校卒業後、横浜の老舗中国料理店「聘珍樓」に入社するも、ほどなくして日本料理に興味を持ち始め、転身。大和実業株式会社の和食店「ごだいご」で研鑽を積み、25歳で料理長に。その後、独学でおでん作りに励み、代官山「俺のおでん 福躍」の料理長に就任。2013年に独立すると、出汁にこだわったおでん店「福躍」を西麻布にオープン。2019年からは本格うどん居酒屋「麻布うどん」も展開している。