「どうしてもレストランクオリティの厚切りのスモークサーモンをお届けしたかった。シンプルだけど素材の良さがダイレクトに伝わる一品です」
「アルジェント」シェフ 鈴木 健太郎
「ダニッシュサーモン」はデンマークのダニッシュサーモン社が「閉鎖循環式」(水を濾過循環して繰り返し使用する)で手がける陸上養殖のアトランティックサーモンです。大手総合商社・丸紅株式会社が日本水産株式会社と共同でこの事業に参画し、大きな注目を集めています。世界的な人口増加やヘルシー志向の高まりから、世界の水産物の需要は年々拡大。そんな中で、環境に配慮しながらも確かなクオリティで安定した供給が期待できるダニッシュサーモンは、社会課題の解決にも繋がる、まさに未来を担った食材です。このダニッシュサーモンを使ったスモークサーモン「プレミアム スモーク」を監修したスターシェフ「アルジェント」の鈴木健太郎シェフに商品開発秘話をうかがいました。
各名産地のサーモンのいいとこ取り! バランスの良さが光るダニッシュサーモン
――まずは、初めて「ダニッシュサーモン」を召し上がった時の感想を聞かせてください。
清涼感のある味わいがとても印象的でした。魚は脂に臭みが溜まりやすいので、脂の質が美味しさを大きく左右するのですが、ダニッシュサーモンは一口食べただけで水質や飼料など、よい環境で育てられていることがわかる美味しさでしたね。
それから、脂のり、脂の質、身のきめ細かさ、香り、旨みの強さ……、すべてにおいてバランスがいい。店では普段、最終的にどのような料理に仕立てるかによってさまざまな産地のサーモンを使い分けています。しっかり脂がのったものがよい時はノルウェーサーモンを、ほどよくあっさりと仕上げたい場合はタスマニアサーモンを、他にもオーストラリアのトラウトサーモンや、同じトラウト系でも国産の信州サーモンを使用することも。
それぞれの特徴を最大限に活かせるように魚種を選んでいるのですが、ダニッシュサーモンは、そんな今まで使ってきたサーモンのいいところを集めたような素晴らしい食材だと思います。生食から火入れまで、幅広い楽しみ方ができると思いますよ。
――その中で今回、スモークサーモンに仕立てられたのはどのような理由からでしょうか?
まずは多くの方が手に取りやすく、それでいてダニッシュサーモンの魅力がもっとも伝わるものと考えると、スモークサーモンがベストだという結論に至りました。素材の美味しさがダイレクトに味わえるシンプルな調理でありながら、どの世代にも人気があり、食べる際に追加調理を必要としないので再現性も高い。レストランクオリティの美味しさを確実にご家庭で味わってもらうためには、こちら側で完璧に仕上げて、あとは開封してお皿に盛るだけというのが一番ですからね。
目指したのは、スモーキーで旨みが強くフレッシュ感があるスモークサーモン
――特にこだわったのはどのような点ですか?
出来上がった時の身の質感と旨みの感じ方を左右する、マリネの塩分濃度、それと漬け込み時間です。初めに、フィレ状にしたダニッシュサーモンを塩、砂糖、コショウでマリネするのですが、塩をどれくらい浸透させるかで最終的に身に残る水分量が変わります。無駄な水分をあらかじめしっかり抜くことで旨みだけが残る。何度も試作を繰り返しました。実は、最初に生産を予定していた工場では納得いくものができず、工場も変更していただきました。
――水分量が美味しさのポイントなのですね。
仕上げには、イタリア産の上質なオリーブオイルを使用。
ええ。燻す時にも水分が抜けるので、そのコントロールも美味しさの決め手です。乾燥させすぎてしまうと、ねっとりとした舌触りのやや重たいスモークサーモンになりますし、燻し足りないとスモークの香りや旨みが弱く水っぽい仕上がりになってしまいます。
目指したのは、スモーキーな香りと凝縮した旨みを持ちながらもフレッシュ感があるスモークサーモン。僕の料理はフレンチがベースではありますが、日本人の料理人として和の感覚も大切にしています。今回のスモークサーモンは、燻製の香りをまとったお刺身のようなイメージです。
――バリエーションが3種類ありますが、それぞれどのような想いでつくられたのでしょうか?
まず一番に、レストランのような厚切りのスモークサーモンをぜひ召し上がっていただきたいという想いがありました。ですから「アルジェントスペシャル」は、フィレの中でももっとも美味しく厚みがある中央の部分を贅沢に切り身で取り、さらに皮も付けたままで仕上げています。
皮は一つ一つガスバーナーを使って手作業で炙っているんです。手間はかかりますが、軽く火を入れることで皮直下の身の旨みが増し、香ばしさも加わってより美味しく仕上がります。召し上がっていただく際には、フライパンで皮だけをサッと焼き直していただくと美味しさがワンランクアップします。ぜひナイフとフォークで贅沢にカットして楽しんでいただきたいですね。
「身に火が入らないようなるべく短時間で、かつ、まんべんなく皮だけを炙っています」(鈴木シェフ)
それから、さまざまな料理に使い勝手がよいスライスの「オリジナル」もスタンダードラインとしてラインアップしました。こちらも一般的なものより厚めにカットしていますので、素材感を楽しんでいただければ嬉しいです。
「バジル」は、尾や頭に近い繊維質が多い部位を使って、大分県産のフレッシュバジルと松の実のペーストと合わせています。生産者さんが丹精込めて育てた素晴らしいダニッシュサーモンですから、すべて無駄なく美味しく食べていただきたくて。この商品があることで他の2品をハイクオリティに保つことができますし、フードロスもなくなります。パンチのある味付けにしていますので、ワインのアテにぴったりですよ!
――家庭でよりレストランのような楽しみ方ができるアレンジ方法はありますか?
基本的には、お皿に盛るだけで完璧な美味しさになるように仕上げているので、彩りに野菜やハーブを添えるだけで十分です。もし「オリジナル」や「アルジェントスペシャル」で味の変化を楽しみたい場合は、ヨーグルトソースがおすすめです。無糖のヨーグルトに塩を加えてトロリとなるまでよく混ぜ、オリーブオイルまたはジェノベーゼソースを軽く合わせるだけ。「バジル」は、パスタに載せたり絡めたりしても美味しいですよ。
――最後に、召し上がっていただく皆さまにメッセージを!
農作物や畜産物と同じように、養殖の魚も生産者の方々のたゆまぬ努力と愛情の賜物です。僕たち料理人は、そこにさらに魂を載せて美味しい料理として昇華させ、お客様へ届けるのが使命だと思っています。「プレミアムスモーク」も、そうして人と人とがバトンをつないで生まれたもの。最後にバトンはお客様の手に渡ります。気軽に、でもぜひ味わって召し上がっていただきたいですね。
アルジェント
住所 | 東京都中央区銀座3-3-1 ZOE銀座 8F |
TEL | 03-5524-1273 |
アクセス | JR有楽町駅より徒歩5分、東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線 銀座駅 徒歩5分 |
営業時間 |
ランチ 11:30~15:30(13:30L.O.) |
定休日 | 月曜(祝日の場合は翌日に振替) |
支払い | クレジットカード可(JCB、AMEX、VISA、MASTER、Diners) |
HP | https://www.hiramatsurestaurant.jp/argento/ |
写真・広瀬美香 文・山本愛理