原 勇太


原 勇太
Hara Yuta
「私厨房 勇」

 

料理は“その人”のためにつくるもの。全席シェフズテーブルで魅せるカウンター中華

第一線を退いた名店のシェフが、気心知れた友人を自宅に招いて食事会を行う香港の食文化「私房菜(シィフォンチョイ)」。その習わしにリスペクトを込めて自身の店名に掲げるのは、東京・白金の中国料理店「私厨房 勇」の原勇太シェフです。全10席のフルオープンカウンターは、すべてがシェフズテーブル。目の前に座るお客様ひとりひとりの声に寄り添い、時に豪快な技を魅せながら、美味しい料理とお酒でもてなします。

「お客様と会話をするのが好きなんです。何を感じてくださったのか、どんな食材がお好きなのかなどの声に耳を傾け、次に来ていただいた時にはより喜んでもらえる料理でお迎えしたい。だから、お客様にも気兼ねなく話しかけてほしいですね」

フルフラットのカウンターにした理由をそう語る原シェフ。また、迫力ある鍋振りや中華包丁による包丁捌きなど、中国料理ならではの技をエンターテインメントとしても楽しんでいただけるようにしたかったといいます。

「私厨房 勇」のメニューは、その日ベストな美味しさをお届けするためにおまかせコースのみ。しかし、すべてのお客様に対して同じ料理を提供するわけではありません。初来店のお客様には、まず「私厨房 勇」を最大限に感じていただけるラインナップを。一方で常連のお客様には、来店回数や好みに応じ、アレンジを加えてコースを構成します。

「会話を交わすうちにお好きな食材やお酒もわかってきます。家庭料理でもレストランでも、食べてくれる人のことを想ってつくるのがやっぱり料理の原点」と、原シェフ。ライトな食後感を意識しながらも中国料理らしい重厚感が得られるよう、油の使い方や調味に工夫を凝らし、軽やかかつ奥深いコースに仕上げます。

CHEF’S VOICE:
情報を食べるのではなく、純粋に素材を見る目を持ってほしい

日本では魚については未だ“天然信仰”が根強いですが、僕自身は天然か養殖かというものさしで食材を判断することはありません。養殖の方が美味しい場合もありますし、どちらも同じ「魚」だと思っています。自分がいいと思ったものを選ぶ、それだけです。

ただ、魚に限らず、近年は情報を先に仕入れてから何かを選ぶことが当たり前になりました。飲食店を選ぶ時も「ミシュランの星付き」や「グルメサイト評価NO.1」など、多くの方がやはりブランドや他人の意見をその選択基準にしています。もちろんこれらは一つの価値ではありますが、そもそも人それぞれ好みや感じ方は違うもの。情報から得た先入観に囚われて、目の前の料理を純粋に味わえていないのだとしたら、これほどもったいないことはありません。

魚においても、天然か養殖かという情報を食べるのではなく、自分の舌で素材の美味しさをまっすぐに感じてほしい。そのために僕にできることとして、シンプルに「美味しい」と思っていただけるCRAFT FISHの商品づくりにチャレンジしたいですね。それがお客様の固定概念をなくすきっかけになれば嬉しいです。

PROFILE

原 勇太
Hara Yuta
「私厨房 勇」シェフ

1980年生まれ。千葉県出身。専門学校卒業後に都内や千葉県の中国料理店で腕を磨いた後、広東料理の名店「文菜華」(千葉県・柏)の渡辺展久シェフに師事。2007年に、中国各地の麺とご飯の専門店「中国麺飯勇」で独立。6年半の営業を経て2014年に「私厨房 勇」(東京都・白金)をオープン。おまかせコースのみながら、それぞれのお客様に寄り添った料理を提供する。