戸高 雄平

戸高 雄平
Yuhei Todaka
「食堂とだか」店主

美味・コストパフォーマンス・居心地の三拍子がそろう、予約難の“食堂”

現在、予約は2年待ち。13,200円(ドリンク・サービス料・税込)のコースのみでありながら、日本料理をベースにした確かな美味しさと遊び心あるアイデア、そして圧倒的なコストパフォーマンスの高さで人気を博す「食堂とだか」。

店主の戸高雄平さんが「どこでも手に入る食材の中で、“どれだけ心に刺さる料理をお届けできるか”が、僕の料理の在り方」と語る背景には、美味しい食事は富裕層だけの特権ではないという考えがあります。

たとえば、甘納豆とマスカルポーネチーズ、ウニと煮玉子といったユニークな組み合わせや、ごぼう豆腐、はまぐりのペーストなどのようにお馴染みの食材を新しい料理に仕立てる技。こうした工夫は、価格に縛りを設けることで食材探しやアレンジの発想がより豊かになり生まれると、戸高さんはいいます。

「この価格なので、高級食材ばかりは使えません。ただ、手に入れやすい食材でも料理人の腕次第で感動をお届けできると思っています。コースの品数は12〜13品。飲み放題も込みで13,200円なら、若い方から美食家の方まで幅広く楽しんでいただけるでしょう? 食事は、美味しく楽しくお腹いっぱい食べてほしい。食堂という店名にもそんな想いを込めています」

お客様と積極的に言葉を交わし、“食堂らしい一体感”も大切にしているという戸高さん。美味しさは無論のこと、食材の新たな一面やお客様同士のふれあいに心からの満足感が得られるからこそ、「食堂とだか」は絶えず人を惹き付けるのでしょう。

 

CHEF’S VOICE:
「現実味がない」。それが今の社会のリアルな声

料理人として格好悪いことは承知の上で正直にいうと、僕らのような末端の現場では、「魚介類が絶滅の危機に瀕している」とか「海の安全が脅かされている」ということに対して、まだ現実味を持てていません。確かに毎年、不漁や乱獲の問題は耳にしますし、仕入れ価格が高くなっていることは事実です。でも正直手が出せない価格ではないし、まったく入ってこないわけでもない。

「どこか違う世界の話」「なんとかやり過ごせてしまっている」。これが現実です。

おそらく、日本国内の多くの飲食店経営者や料理人が同じ感覚でしょう。ただ、そうして他人事だと思っている間にどんどん危機は高まっているのですよね。

無知の僕が、無理に取り繕って「魚が危ない!」「環境を守ろう!」と叫んでも伝わらないと思うので、僕は僕の得意分野を活かしたアプローチができればいいなと思っています。たとえば、若い世代や魚に特別な興味がない人の心を掴むようなアレンジ料理や、調味料、食べ方の開発・提案などに取り組みたいですね。そうやって魚介との接点を増やすことで、お客様が、そして僕自身も、未来の海について考える機会になればと思います。

PROFILE

戸高 雄平
Yuhei Todaka
「食堂とだか」店主

1984年生まれ。鹿児島県出身。高校生の時に先輩に連れていってもらった店で茶碗蒸しの美味しさに魅了され、料理の世界へ。地元鹿児島県の居酒屋チェーンや東京の有名和食店で研鑽を積み、2015年9月に独立すると、またたく間に予約困難店に。翌年7月に「立呑み とだか」をオープンし、両店の店主を務める。