北村 徳康

北村 徳康
Noriyasu Kitamura
「荒木町 きんつぎ」

自由な発想の創作コースで魅了する、“普段使い”の日本料理店

「『きんつぎ』は、“普段使い”の店です。食通の大人たちが集う、ちょっといいファミレスのような存在でありたい」

そう話すのは、日本料理店「荒木町 きんつぎ」で調理場を仕切る北村徳康さん。陶器の割れや欠けを漆でつなぐ日本の伝統技術・金継ぎにちなみ、共に店を率いる佐藤正規さんと力を合わせ、生産者や蔵元の想いを料理に込めてお客様へ届けています。

伝統的な日本料理をベースに、フレンチやエスニックなど、さまざまなエッセンスを取り入れながら自由な発想で構成されるおまかせコース(8,580円/税込)の品数はなんと20以上。素材、味付け、テクスチャーはもちろん、調理法や温度帯などにもバリエーションを持たせることで、最後の一品まで飽きさせません。

「その日に手に入る旬の素材を使って料理を仕立てるので、コースの内容は決まった期間で一新するのではなく、季節に応じて少しずつ移ろいでいきます。僕らが目指すのは“普段使い”の店。週に一度のペースで通ってくださるお客様にも毎回ご満足いただけるよう、また、一度の来店でさまざまな旬の味覚を最大限に味わっていただきたいと考えたら、このスタイルに行き着きました」

短い間隔で複数回来店するお客様には少しずつ料理を変えたり、お酒の進み方を見て品数を減らしたりといったフレキシブルなサービスも少量多品だからこそできること。

「肩肘張らず寛ぎながら、お酒と料理を楽しんでもらえれば嬉しいです」

 

CHEF’S VOICE:
天然か養殖かではなく、「美味しいから」という理由で選びたい

コースの一品として定番でお出ししている鯖鮨には、養殖の鯖を使っています。脂のりのよいものが安定して手に入りますし、何より臭みがなく美味しい。お客様にも大変好評いただいています。天然の鯖と違って寄生虫の心配もないので、安心してご提供できますしね。

実はつい最近まで、修業時代も含めて養殖の魚は使ったことがありませんでした。「よくわかっていなかった」というのが本音。にも関わらず、ネガティブなイメージだけをずっと抱えていたんです。しかし今回、CRAFT FISHを通してさまざまな養殖魚に出合い、その考えは確実に変わり始めています。生産者の努力によって非常に良質なものが安定して手に入るようになっていることを実感していますし、養殖魚には養殖魚の長所があるとも感じています。それを活かす調理ができれば、天然の魚では表現できない美味しささえ生み出せる、と。安全性や価格ももちろん大切ですが、やはり素材は「美味しい」という理由で選びたいですから。

僕ら料理人こそ、お客様の養殖に対するネガティブなイメージを払拭させることができる存在です。今後は現場にもたくさん足を運んで養殖事業者の想いを受け取り、生の声をお客様に伝えたい。それが「きんつぎ」の仕事の一つだと思っています。

PROFILE

 

北村 徳康
Noriyasu Kitamura
「荒木町 きんつぎ」

1986年生まれ。茨城県出身。専門学校時代にアルバイトをしていた老舗バー「画亭瑠屋(かくてるや)」(神奈川県・日吉)のマスターに影響を受け、酒×料理の世界に興味を持つ。日本酒居酒屋「件」(学芸大学)や高級鮨店、中目黒の和食店「ひぐらし」などでの修業を経て、同じく「件」出身の佐藤正規氏と共に2018年に「荒木町 きんつぎ」をオープン。