鈴木 夏暉

Natsuki Suzuki
「Restaurant Naz」
新進気鋭のシェフが魅せる、イタリア×北欧の発酵料理
地元・長野県で採れる豊かな食材を使い、自身が技を培ってきたイタリアと北欧のエッセンスをふんだんに料理に盛り込む「Restaurant Naz(レストラン ナズ)」の鈴木夏暉シェフ。
すべてのベースとなっているのは、発酵や熟成によって素材そのものから生まれる奥深い旨みです。乳酸発酵させたフルーツや野菜は、形を残して使ったりソースやジュースのようにしたり。スペシャリテの熟成信州サーモンには、ザクロの香りをまとった発酵トマトのスープを合わせます。
「北欧でさまざまな発酵料理に出合った時、未知数の可能性を感じました。同じく発酵食文化を有する日本料理に通ずるものを覚えたからです。北欧料理は、一見すると華やかで刺激的な印象を受けますが、口にすると日本料理のだしに似たやわらかな旨みがあり、不思議と体に馴染む感覚が得られる。そんな発酵によって生まれる“だし感”を軸にして、すべての料理を構成しています」
発酵ならではのまろみある酸味も多用しながら、食材はもちろん、自身の料理表現そのもののまだ見ぬ一面を探り続ける鈴木シェフ。しっかりとボリュームがありつつも食べ疲れることなく、初めて出合うのにどこか親しみを覚えるNazの料理は、早くも多くのフーディーたちを虜にしています。
CHEF’S VOICE:
固定概念が最大の壁。料理人こそ食材を見極めるべき
スペシャリテにも使用しているサーモンは、地元・長野県で養殖されたものを使っています。「養殖が天然より優れている」という考えを持っているからではありません。大事なのは、水や餌といったその魚が育った環境を知り、素材として高いクオリティを備えているかどうかを、自分の目と舌で見極めること。そして料理人こそ、養殖魚のストロングポイントとウィークポイントを理解した上で、活かし方を学ぶべきだと思っています。
養殖技術は確実に、さらには格段に上がっているにも関わらず、未だに日本では養殖魚に対してネガティブなイメージを持ち続けている人がほとんどですよね。そこには、日本人特有の「固定概念」が多分にあるというのが僕の考えです。一般の方だけでなくプロまでもが、その先入観に捕らわれすぎているのではないでしょうか。
もちろん養殖魚には養殖魚の弱点がありますし、一概に優れているとはいえません。だからこそ、フラットな目線で向き合い、理解することが大切。養殖魚のいいところを引き出し、苦手なところをカバーできる料理法を、僕ら料理人がもっと知る必要があると思います。
料理人がいい料理に落とし込んでいければ、需要を高めることも、天然魚と養殖魚のバランスを取っていくこともできるでしょう。養殖でも、四季がある日本らしく水温や湿度の変化によって少しずつ育ち方が変わり、季節を感じられるのもおもしろいなと感じています。
PROFILE

鈴木 夏暉
Natsuki Suzuki
「Restaurant Naz」シェフ
1994年生まれ。長野県出身。高校を中退後、16歳で料理の世界へ。地元・佐久のピッツェリアで4年間勤めた後に単身イタリアに渡る。ナポリピッツァの名店「Il pizzaiolo del presidente」や、世界一のレストランとも称されるデンマークの「noma」で研鑽を積み帰国。2020年9月に軽井沢に「Restaurant Naz」をオープン。