磯島 仁

磯島 仁
Hitoshi Isojima
「ENEKO Tokyo」総料理長兼総支配人

“東京のバスク”へようこそ。最高の料理とサービスで、記憶に残る食事時間を

「ガストロミーというスタイルで料理をご提供していますが、すべてのベースにあるのはスペイン・バスク地方の郷土料理です」

そう語るのは、バスクの三つ星店「アスルメンディ」のエネコ・アチャ・アスルメンディシェフが手がけるモダンバスクレストラン「Eneko Tokyo」で、総料理長兼総支配人を務める磯島仁シェフ。食材の持ち味を活かしてシンプルに仕上げる調理法や、米食文化が根付く点など、バスクと日本の料理には親和性があると話します。

いかに「記憶に残る食事の時間」をゲストにお届けできるか。それが、磯島シェフが受け継ぐ“エネコイズム”です。料理の美味しさや美しさはもちろん、サービスやスタッフとの会話を通じて、お客様の心が躍るようなアイデアを随所に鏤めます。たとえばディナーコースの3品のアペリティーボは、ウェルカムドリンクのチャコリ(バスク地方特産の白ワイン)と共に部屋を移動してもらいながら、キッチンスタッフが1品ずつ目の前で仕上げて提供。各部屋には、バスクの歴史と風土が感じられる調度品が並び、食べては移動してと、まるで旅をしているかのような気分に。

「じっと座っていれば美味しい料理が出てくるレストランは五万と存在します。思い出に残る食事の時間と、東京にいながらにしてバスク文化が体感できる場所。それがENEKO Tokyoです」

CHEF’S VOICE:
品種の保護と繁殖が、食文化の継承につながる

もともと、養殖魚に対してすごくネガティブな印象を持っているわけではありません。サイズ感や味がある程度均一化されていてリーズナブルですし、蒸し料理にする時などはほどよく脂が残って美味しい。一昔前は、“養殖=悪”のようなイメージが根強かったかもしれませんが、要は料理人の調理法次第というのが僕の考えです。

それでも、明らかに近年の養殖技術は上がったと感じています。利便性よりも質が求められるようになり、生産者の方々が努力されてきた証しでしょう。すだち鯛やみかん鯛に代表されるような、各地の特産品を活かしたものなども登場して、ブランディングの側面からも進化を続けている。

天然の海産物の安全性や乱獲が懸念され始めている今、こうした技術開発やCRAFT FISHのようなプロジェクトは、料理人にとっても社会にとっても必要なものだと思っています。特に、存続の危機に瀕している品種の保護・繁殖には期待したいですね。ひいてはそれが、食文化の継承にもつながります。

そのために僕ら料理人ができることは、少しでもそれをお客様に食べていただける機会をつくること。美味しい料理に仕上げることはもちろん、ストーリーを伝え、記憶に残るものになるよう、どんなふうにプレゼンテーションするかも僕ら次第。料理人は、生産者の方々がいて初めて料理ができるのですから。

PROFILE

磯島 仁
Hitoshi Isojima
「ENEKO Tokyo」総料理長兼総支配人

1975年生まれ。秋田県出身。織田調理師専門学校を卒業後、「レストラン・クイーン・アリス」で15年間フレンチを学び、2006年に舞浜店の料理長に就任。2014年より「日比谷パレス」の料理長を務める。スペインの三つ星レストラン「アスルメンディ」のシェフ、エネコ・アチャ・アスルメンディ氏のもと4ヶ月間の研修を受け、2017年の「ENEKO Tokyo」オープンより総料理長兼総支配人を務める。